私は鍵のレスキューサービスに従事して10年以上になりますが、毎日寄せられる依頼の約4割がオートロックにまつわる締め出しトラブルです。現場に急行して目にするのは、冬空の下で震える薄着の入居者や、泣きじゃくる子供を抱えたお母さん、あるいは仕事の重要な会議に間に合わなくなって青ざめた表情のビジネスマンなど、悲喜こもごもの人間模様です。オートロックという仕組みは、防犯性を高める一方で、一度ミスを犯した人間に対してこれほどまでに冷酷に振る舞うものかと、職人の私でさえ感じることがあります。多くの人がオートロックを過信していますが、機械である以上、100パーセントの動作保証はありません。センサーの誤作動やドアクローザーの調整不良によって、本来かかるべきではないタイミングで鍵がかかってしまうことも珍しくないのです。特にお伝えしたい実態は、締め出し事故が起こる時間帯の傾向です。私たちのデータによれば、最も依頼が多いのは朝の7時から9時、そして夜の18時から21時です。朝の時間帯は、ゴミ出しや新聞を取りに出た際、あるいは子供を送り出す瞬間の不注意が原因です。夜の時間帯は、仕事から帰宅して疲れ果て、荷物を置いた後にふらっとコンビニへ行こうとした際のミスが目立ちます。つまり、人間の注意力がいかに環境や疲労に左右されるかということが、現場の数にそのまま表れているのです。また、最近増えているのがスマートフォンのアプリで管理するスマートロックの故障による締め出しです。サーバーのダウンやアプリのバグ、Bluetoothの接続不良など、アナログな鍵では起こり得なかった原因で、正規の住人が家に入れなくなるケースが急増しています。現場での解錠作業は、見た目以上に困難を伴うことがあります。最近のマンションに採用されている鍵はディンプルキーなどのハイセキュリティ錠が主流で、鍵穴からのピッキング解錠はほぼ不可能です。そのため、私たちはドアの隙間から特殊な工具を差し込み、内側のつまみであるサムターンを直接回すサムターン回しという技法を用います。しかし、これも防犯のためにサムターンが空回りする対策が施されていることが多く、解錠までに1時間を要することも珍しくありません。解錠費用が高額になる理由は、この高度な技術料と、特殊な工具の維持費、そして24時間体制で待機するコストにあります。決して私たちは足元を見ているわけではなく、それだけの価値がある作業を行っているという自負がありますが、お客様からすれば痛い出費であることに変わりはないでしょう。私がお客様にいつもアドバイスしているのは、自分の家の鍵のメーカーと型番を知っておくこと、そして管理会社の連絡先をスマートフォン以外の場所にもメモしておくことです。締め出された瞬間、すべての情報が遮断される恐怖は、知識という備えがあるだけで大幅に軽減されます。また、オートロック付きの物件を選ぶ際は、エントランスだけでなく、各住戸のドアの形状や鍵の種類を事前にチェックし、万が一の際にどのような業者が対応可能なのかを確認しておくことも、賢い防犯意識の1つです。鍵は家を守るための盾ですが、時には牙を剥くこともある。
鍵の専門家が語るオートロック締め出しトラブルの実態