プロの整備士として、毎日多くのお客様から車の不調に関する相談を受けますが、特に慌てて電話をかけてこられるのが、エンジンがかからず赤いランプが点滅しているというケースです。この赤いランプは、車両のセキュリティシステムが正常に作動している証拠でもありますが、始動時に消えない場合は、車と鍵の間で行われる秘密の会話が成立していないことを意味します。現場に到着して最初に行うのは、お客様が正しい手順を踏んでいるかの確認です。意外と多いのが、ブレーキペダルの踏み込みが甘いという事例です。最近の車は安全のためにブレーキを強く踏まないと始動しない設計になっており、奥までしっかり踏み込むだけで解決することが1割ほどあります。また、シフトレバーがPレンジに完全に収まっていない場合も、システムは始動を許可せず、警告としてランプを点滅させることがあります。 これらに問題がない場合、次に確認すべきはスマートキーの状態です。スマートキーは常に微弱な電波を発信していますが、電池が少なくなると車両側のアンテナがそれを拾えなくなります。この際、メーターには鍵が見つかりませんというメッセージが出ることが多いのですが、車種によっては赤いランプの点滅速度が変わるだけで知らせるものもあります。裏技的な対処法として、キーの電池蓋を外して電池を一度抜き差しし、端子を少しだけ指で擦って酸化膜を落とすと、一時的に電波強度が回復してエンジンがかかることがあります。あくまで応急処置ですが、人里離れた場所で立ち往生した際には試す価値があります。また、スペアキーが手元にあるなら、必ずそちらで試してください。メインのキーの基板が衝撃や水濡れで破損している場合、スペアキーならあっさり始動することが多いからです。 バッテリーの問題も、赤いランプ点滅と深く関わっています。スターターモーターを回すほどの電力はなくても、メーターのLEDを光らせる程度の電力は残っているという中途半端な状態が、電子制御ユニットの誤作動を招くのです。この場合、ジャンプスターターを使って外部から電力を供給すれば、イモビライザーの認証も正常に戻ります。ただし、ジャンプスタートに成功しても、一度電圧が不安定になったことでECUにエラーログが残ってしまうことがあります。これが原因で、後日再びランプが点滅することもあるため、エンジンがかかった後は速やかにディーラーでダイアグノシス点検を受けることを強くお勧めします。最後に、後付けの電装品、例えばドライブレコーダーやレーダー探知機が、イモビライザーの通信を阻害しているケースも稀に見受けられます。もし自分で取り付けた後に症状が出始めたのであれば、一度それらの電源を抜いて確認してみるのも、プロが現場で行うトラブルシューティングの重要な一歩です。