あれは3年前の夏休み、家族で長野県の高原へキャンプに出かけた時の出来事でした。標高が高いキャンプ場で、清々しい空気の中でバーベキューを楽しんでいた私は、片付けをしている最中にポケットから鍵が滑り落ちたことに全く気づきませんでした。夜になり、車の中にある寝袋を取りに行こうとして初めて、鍵がないことに愕然としました。足元の草むらを懐中電灯で何時間も探し回りましたが、広大な敷地と暗闇の中では絶望的でした。携帯電話の電波も微弱で、最寄りのディーラーまでは数十キロメートル離れています。レッカー車を呼ぶにも、山奥のキャンプ場までいつ到着するのか分かりません。途方に暮れていた時、スマートフォンの検索で「24時間出張対応の鍵作成業者」を見つけ、藁をも縇る思いで電話をかけました。電話口のオペレーターは非常に落ち着いた声で、車種と年式、現在の場所を詳しく聞いてきました。私の車はトヨタのアルファードで、スマートキーを紛失したことを伝えると、概算の費用と到着予定時間を教えてくれました。深夜にもかかわらず、2時間ほどで1台の作業車が山道を登ってやってきました。到着した作業員の方は、まずは私の免許証と車内にあった車検証を確認し、本人確認を済ませました。その後、作業車の荷台に積まれた精密な機械を使い、何やら複雑な作業を始めました。窓越しに様子を見ていると、車載コンピューターに特殊な機材を接続し、新しいスマートキーの登録作業を行っているようでした。山奥の静まり返ったキャンプ場に、機械の作動音だけが響いていました。作業開始から約1時間後、作業員の方が「これで大丈夫ですよ」と声をかけてくれました。手渡された新しいスマートキーでドアを解錠し、ブレーキを踏んでスタートボタンを押すと、力強くエンジンが始動しました。その瞬間の安堵感は、今でも鮮明に覚えています。費用は出張料を含めて5万円ほどかかりましたが、レッカー移動や宿泊の延期、そして翌日からの予定が全て白紙になることを考えれば、決して高いとは感じませんでした。プロの技術が、私たちの絶望的な状況を救ってくれたのです。この経験以来、私は車の鍵の重要性を痛感し、キャンプなどのアウトドアに出かける際は、必ず妻にも予備の鍵を持ってもらうようにしています。日頃から鍵の保管場所を固定し、家族間での共有ルールを決めておくことも、突然の紛失トラブルを避けるための基本中の基本です。
旅先で車の鍵を無くして現場で作ってもらった話