あの日、私は仕事の疲れを癒やすために少し遠くの温泉地までドライブに出かけていました。帰路はすっかり夜が更け、東北自動車道のサービスエリアで1時間の仮眠を取ることにしたのです。目覚めた時、周囲は真っ暗で、冷たい風が車体を揺らしていました。早く家に帰ろうとスタートボタンに指をかけましたが、エンジンは静寂を保ったまま微塵も動きませんでした。代わりに視界に飛び込んできたのは、メーターの隅で冷ややかに点滅する赤い鍵のマークでした。一瞬、心臓が止まるかと思いました。これまで10年近く車に乗ってきましたが、こんな表示を見たのは初めてだったからです。何度もボタンを押し、ハンドルをガチャガチャと動かしてみましたが、車は沈黙を守り続け、赤いランプだけが規則正しく点滅を繰り返すばかりでした。深夜2時のサービスエリアで1人、動かない鉄の塊に取り残された絶望感は言葉にできません。 スマートフォンで必死に検索すると、どうやらイモビライザーの認証エラーである可能性が高いことが分かりました。原因として挙げられていたのはスマートキーの電池切れでしたが、半年前に交換したばかりだったので、まさか自分の車に限ってそんなことはないと思い込んでいました。しかし、他に打つ手もありません。記事に書いてあった通り、スマートキーをスタートボタンに近づけて押してみましたが、反応はありませんでした。次に疑ったのはバッテリー上がりです。室内灯を点けてみると、心なしか光が弱々しく感じられました。結局、自力での復旧を諦めてロードサービスを呼ぶことにしました。電話口で赤いランプが点滅していることと、エンジンが全くかからないことを伝えると、担当者は落ち着いた声で、すぐに作業車を向かわせますと言ってくれました。到着までの1時間は、寒さと不安で永遠のように長く感じられました。 到着した整備士さんは、テスターを使って手際よく点検を始めました。結果は意外なものでした。バッテリーの電圧自体は正常範囲内でしたが、スマートキーの電池が極端に消耗していたのです。半年前の交換時に安価な海外製の電池を使用したことが原因だったのかもしれません。さらに、ダッシュボードに置いていた大型のモバイルバッテリーが発する磁気が、認証プロセスを妨害していた可能性も指摘されました。整備士さんが持っていた新しい電池に交換し、モバイルバッテリーを後部座席へ移動させてからボタンを押すと、嘘のように力強くエンジンが始動しました。たった1個の小さな電池と、無造作に置いた荷物が原因で、これほどの騒動になるとは夢にも思いませんでした。あの日以来、私は予備のボタン電池を必ずグローブボックスに常備し、スマートキーの近くには電子機器を置かないように徹底しています。赤いランプの点滅は、私にとって忘れられない教訓となりました。
深夜のサービスエリアで赤いランプが点滅した私の失敗談