ある月曜日の朝、都内にある中堅企業の経理部で大騒動が起きました。毎朝の業務開始時に必ず開けるはずの業務用金庫が、暗証番号を入力しても、鍵を回しても、全く反応しなくなったのです。その中には、その日の決済に必要な手形や社印、そして多額の現金が保管されていました。経理部長は青ざめ、すぐに金庫のメーカーに電話をしましたが、修理担当が到着するのは明日の午後になると言われてしまいます。それでは今日の取引に間に合いません。絶望的な状況の中で、部長はインターネットで24時間、即日対応を謳う大手の金庫解錠業者を見つけ、藁をも縇る思いで連絡をしました。 電話からわずか40分後、業者の作業員が事務所に駆けつけました。作業員は金庫の前面にあるテンキーパネルを外し、内部の電圧を測定し始めました。原因は、電子ロックの駆動部分であるソレノイドと呼ばれる部品の故障でした。15年間の使用で部品の寿命が来ていたのです。さらに、扉が長年の自重でわずかに沈み込んでおり、かんぬきが枠に強く接触していたことも、電子的な解錠を妨げる要因となっていました。作業員は部長に対し、現在の状況と、これから行う作業の内容、そして費用について、非常に論理的かつ明確に説明を行いました。時間が限られている中での説明でしたが、その誠実な態度に部長は全幅の信頼を置くことにしました。 作業員は、金庫の側面の目立たない位置に、針の穴ほどの小さな穴をドリルで開けました。そこからファイバースコープを挿入し、内部の構造を確認しながら、ソレノイドをバイパスして直接かんぬきを動かす特殊な工具を操作しました。息を呑むような沈黙が続く中、数分後、金庫からガチャンという力強い音が響きました。無事に扉が開き、中から必要な印鑑や書類が取り出された瞬間、事務所内には歓声が上がりました。決済の時間まであと1時間という、まさに間一髪のタイミングでした。作業員は解錠後、開けた穴を特殊な金属パテで埋め、見た目にはほとんど分からない状態に補修してくれました。 今回の事例で特筆すべきは、業者の迅速な判断と、高度な技術、そして何より依頼者の不安を解消するコミュニケーション能力です。費用の総額は出張料、技術料、穴開け補修費を含めて5万5000円となりましたが、会社の業務が丸一日ストップして被る損失を考えれば、極めて安価な投資だったと言えるでしょう。会社側はこの一件を機に、定期的な金庫の点検契約をその業者と結ぶことに決めました。不測の事態はいつ起こるか分かりませんが、いざという時に頼れるプロの業者を知っているかどうかが、企業の危機管理において決定的な差を生むことを、この事例は雄弁に物語っています。
事務所の業務用金庫が故障した際の迅速な解決事例