インターネット上には、鍵に関する様々な情報が溢れています。「粘土で鍵穴の型を取る」「写真から3Dプリンターで出力する」など、まるでスパイ映画のような、元鍵なしでの合鍵作成を謳う情報も、検索すれば見つかるかもしれません。DIY精神が旺盛な方なら、「もしかしたら、自分でできるのでは?」と、興味をそそられるかもしれません。しかし、ここで断言します。素人が、元鍵なしの状態から、実用的な合鍵をDIYで作成することは、「不可能であり、かつ極めて危険」です。その理由を、技術的な側面と、法的な側面の両方から、明確に理解しておく必要があります。まず、技術的な側面です。鍵と鍵穴の関係は、私たちが想像する以上に、ミクロン単位の精度で成り立っています。鍵穴の内部にあるピンを、正しい高さに、寸分の狂いもなく押し上げることで、初めてシリンダーは回転します。粘土のような、柔らかく、変形しやすい素材で、このミクロン単位の精度を持つ型を取ることなど、物理的に不可能です。また、たとえ高解像度の写真があったとしても、そこから鍵の正確な深さや角度を、素人がデータ化することはできません。仮に、何らかの方法で鍵のような形のものを作り出せたとしても、それは、鍵穴には入るけれど回らない、あるいは、無理に回そうとすると鍵穴内部を傷つけるだけの、「金属のガラクタ」にしかならないでしょう。シリンダーを完全に破壊してしまい、結局はプロに高額な交換費用を支払うことになるのが、関の山です。次に、より深刻なのが、法的な側面です。正当な理由なく、鍵を開けるための専用工具(ピッキングツールなど)を所持していることは、「ピッキング防止法(特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律)」によって、法律で固く禁じられています。これに違反した場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。また、他人の家の鍵を、無断で作成しようと試みる行為は、それ自体が住居侵入予備などの犯罪と見なされる危険性もはらんでいます。元鍵がない状態からの鍵作成は、専門的な知識、高度な技術、そして専用の機材を持つ、許されたプロフェッショナルだけが行える、特殊な作業です。安易な好奇心や、節約意識から、決して踏み込んではならない領域であることを、強く肝に銘じておくべきです。
DIYで元鍵なしの合鍵作成は可能か?