あらゆる手段を尽くしてもスーツケースの鍵が開かず、プロの鍵屋を呼ぶ時間もお金もない。そして、中に入っている荷物が何よりも優先される。そんな追い詰められた状況で、最後に残された選択肢が「鍵を破壊して開ける」というものです。しかし、これは文字通り最後の手段であり、スーツケースの鍵としての機能を完全に失うことを覚悟の上で行わなければなりません。やみくもに破壊を試みると、スーツケース本体にまで深刻なダメージを与えてしまうため、できるだけ被害を最小限に抑える方法を知っておくことが重要です。まず、対象となる鍵の種類を見極めます。スーツケースの鍵は、大きく分けて、鍵穴に鍵を差し込む「シリンダー錠」と、ファスナーのスライダー部分を固定する「南京錠タイプ」、そして「ダイヤルロック式」があります。南京錠タイプが最も破壊しやすいと言えます。南京錠のU字型の金具(ツル)の部分を、ワイヤーカッターやボルトクリッパーといった強力な工具で切断します。ただし、この方法は相応の力と適切な工具が必要です。シリンダー錠や、スーツケース本体に埋め込まれたダイヤルロック式の場合、ファスナーのスライダー(引き手)そのものを破壊するのが、本体へのダメージを抑える一つの方法です。スライダーには、鍵やダイヤルに引っ掛けるための小さな穴が開いています。この輪の部分を、大型のニッパーやペンチを使って強引に切断、あるいはねじ曲げて、ロック機構から引き抜きます。これにより、施錠はできなくなりますが、とりあえずファスナーを開けて中身を取り出すことは可能になります。ただし、この方法もスライダーが破損するため、後で修理が必要になります。もし、どうしても鍵のシリンダー部分を破壊する場合は、ドリルを使って鍵穴を直接破壊するという方法がありますが、これは内部の構造を理解していない素人が行うと、ドリルが滑ってスーツケース本体を傷つけたり、怪我をしたりするリスクが非常に高いため、全くお勧めできません。いずれの方法を取るにせよ、鍵を破壊するということは、そのスーツケースの防犯機能が失われることを意味します。その後の旅行では、スーツケースベルトなどで代用するか、修理に出す、あるいは買い替えることを念頭に置いた上で、自己責任において最終的な決断を下す必要があります。