近年、防犯性の高さから多くの住宅で採用されている、表面に多数の小さなくぼみ(ディンプル)がある「ディンプルキー」。このタイプの鍵の合鍵を作ろうとして、その値段に驚いた経験を持つ方もいるかもしれません。一般的なギザギザの鍵が千円前後で作れるのに対し、ディンプルキーの複製値段は一本あたり三千円から六千円、あるいはそれ以上かかることも珍しくありません。なぜ、これほどまでに値段が高くなるのでしょうか。その理由は、ディンプルキーが持つ高度なセキュリティ性能と、それを複製するための技術的なハードルの高さにあります。高額になる理由は主に三つあります。一つ目は、「ブランクキー(元の鍵)自体が高価である」ことです。ディンプルキーの多くは、メーカーが特許を取得しており、その製造や流通が厳しく管理されています。そのため、ブランクキーの仕入れ値そのものが高価になります。また、メーカーによっては、専用の登録カードがなければブランクキーの取り寄せすらできない場合もあります。二つ目は、「作製に専用の高性能な機械が必要である」ことです。ディンプルキーの複雑なくぼみを、ミクロン単位の精度で正確に再現するためには、コンピュータ制御された高価な専用のキーマシンが不可欠です。この設備投資のコストが、複製値段に反映されるのです。三つ目は、「作製に高い技術と時間がかかる」ことです。機械を操作するオペレーターにも、鍵の構造に関する深い知識と、精密な機械を正確に扱う技術が求められます。そのため、誰でも簡単に作れるわけではなく、その技術料も価格に含まれています。このように、ディンプルキーの合鍵の値段の高さは、その防犯性能の高さの裏返しなのです。安易にホームセンターなどで作ろうとせず、専用の設備と確かな技術を持つ専門の鍵屋に依頼することが、確実で精度の高い合鍵を手に入れるための唯一の方法と言えるでしょう。