玄関の鍵をなくし、専門業者に鍵開けを依頼した際、提示された金額に驚いた経験を持つ方は少なくないかもしれません。特に、自宅の鍵が表面に小さなくぼみ(ディンプル)を持つディンプルキーだった場合、その料金は従来型のギザギザした鍵に比べて格段に高くなる傾向があります。なぜディンプルキーの鍵開けは、これほどまでに高額なのでしょうか。その理由は、この鍵が持つ圧倒的な防犯性能と、それを突破するために求められる極めて高度な専門技術にあります。従来のピンシリンダー錠が、鍵の片側あるいは両側のギザギザの深さだけでピンを操作するのに対し、ディンプルキーは構造が根本から異なります。鍵の表面や側面に設けられた、大きさも深さも異なる複数のくぼみが、シリンダー内部にある複雑に配置されたピンを、上下左右、時には斜め方向から同時に正しい位置へと押し上げなければ、鍵は決して回りません。ピンの数自体も多く、その組み合わせは数百万から数千万、製品によっては億を超えるパターンに達します。この複雑怪奇な内部構造こそが、ディンプルキーの防犯性の根幹であり、ピッキングと呼ばれる不正解錠を極めて困難にしているのです。この鉄壁の守りを、鍵を破壊することなく開けるためには、鍵師には超人的な技術と経験、そして指先の繊細な感覚が要求されます。使用する工具も、一般的なものではなく、それぞれの鍵の構造に合わせて作られた特殊なテンションレンチやピックを巧みに操らなければなりません。作業には多大な集中力と時間が必要となり、その技術的な難易度の高さが、そのまま作業料金という形で反映されるのです。つまり、ディンプルキーの鍵開け料金の高さは、決して不当なものではなく、あなたの家の安全を日々守っている高度なセキュリティシステムを、合法的に、かつ無傷で乗り越えるための、プロフェッショナルな技術への正当な対価であると言えるでしょう。
ディンプルキーの鍵開けはなぜ高いのか